帰ってきたらミハエルが人の棚に顔を突っ込んでいたので思わず眉を潜めた。何をしているのと尋ねれば、コーヒーが見つからないんだそうだ。久しぶりに現れたと思ったら、相変わらず自分勝手な人。

「私飲まないもの、置いてないよ」
「嘘だろ、信じらんねー」
「ミハエルが飲めるだなんて思わなかった。ミルクでいいんじゃない?」

あん?と鋭く睨まれてしまう。冗談だよ、と両手を見せてみたけれど、半分以上は本気だった。ミハエルはコーヒーよりもミルクが似合う気がする。がたいは良いくせに、なかなかどうして子どもっぽいのだ。結局コーラで妥協したらしいミハエルはペットボトルに直接口をつけるので、私は再び眉を潜めることになる。買ったばかりだったのに。

「買っておくね、コーヒー」
「飲めないんだろ?」

そうだけど、彼の餌は多い方が良いじゃないか。ミハエルは自分のお仕事で忙しいらしい。お仕事というか、やらなければならないこと、というか。生憎私は土から離れて生活など出来ない人間なので、こうして時折地上に降りてくるミハエルを出迎えることしか出来ない。だったら、うちではおいしいコーヒーを飲めますよだなんて売り出しておいたら、頭の弱い彼のことだからフラフラ来るかも知れない。出来れば事前に連絡はして欲しいのだけれど。
ミハエルは悶々と考える私を暫く無表情で眺めていたけれど、やがて大股で近づいて、かと思えば存外優しいキスを私に送ってくれた。

「キスした後に、苦いって眉潜められるよりはマシ」

そう言って子供っぽく笑うので、素直になれない私は思いきり眉を潜めてやった。「甘すぎ」ミハエルはぐしゃぐしゃと頭を撫で、もう一度口付ける。何だか餌やりみたい。もしかしたら彼にとっては、コーヒーより効き目があるかもしれないなんて、ちょっとだけ自惚れてみたりして。
至近距離で見た彼の顔はとろとろだ。本当に、子どもみたい。そこでミハエルはようやく思い出したように、ようやくほしかった言葉を口にした。ねえ、うちにはおいしい餌がたくさんあるでしょう?

「ただいま、




おかえり、蛍くん